■第一回 危ない橋こそ渡れ!

その異常なまでの熱気と、枠にとどまらない芸風で圧倒的な存在感を放つ、寶船。ライブハウスでの阿波踊り公演は、第一回・第二回と共にソウルドアウト。今人気絶頂の彼らの魅力に迫ります。今回は、次回の秋公演「宝が宝がやってきた」で舞台演出を務める米澤陸さんのスペシャルインタビューです。

「阿波踊りってこういうもの」と決めてしまうと、
芸が時代に負けてしまう。

――ライヴハウスでの公演は3回目ですが、今回のテーマはどのようなものでしょうか。

今回の公演タイトルは「宝が宝がやってきた」と言うんですが、僕なりに寶船としての"宝"とは何だろうと言うのがテーマですね。寶船のメンバーはいろんな人がいます。学校も違うし、それぞれの生い立ちも様々です。寶船を通じてじゃなければ一生会わなかった人同士もたくさんいると思います。その中で、まず全員が持っている共通するものは何だろうと考えたんです。そこで僕が考えたのが、「お母さん」というテーマでした。

――「お母さん」というテーマに至ったのはどのような理由なんですか。

寶船は母子家庭の連員も多くいるんです。そんな様々な家庭の高校生や大学生・社会人の人達が、本気で咽が枯れるくらい「お母さん」と叫んだら面白いなと思ったんです。形として自分を生んだ人ということだけでなく、もっと掘り下げて「お母さん」を考えようということがテーマになったきっかけですね。「母親」っていうのは、帰っていく場所だと思うんです。母親から生まれて、最終的に歳をとって行き詰ったり、自分がわからなくなったりした時、ふとスタートに立ち返る。それが母親だと思うんです。父親はどちらかと言うと突き放す存在な気がします。最終的に越えて離れなければいけないというか。それから、寶船自体が「お母さん」でありたいという意味もあります。だから今回は、人が必ず立ち帰る「お母さん」をテーマに作っていきました。

――具体的に、陸さんが演出や振り付けをする方法はどのようなものですか。

僕はまずイメージを作ります。これやったら面白いんじゃないかというのを、頭で漠然と練るんです。そしてそれにタイトルをつけます。そうすれば、そのタイトルの雰囲気で連員も何となくイメージを捉えてくれるんです。

――実際にやってみると、イメージと現実で違うことはないですか。

よくありますよ。男の子で考えた振りを、たまたま練習に来ていた女の子でやったりもしますし。でもそれがまたいいんですよね。イメージだけに縛られると、予定調和でつまらないこともたくさんあるんで、常に実際の瞬間でいいものを選んでいきたいんです。それが一番リアルで面白いので。

――萌さんにインタビューをした時にも、予定調和では面白くないということをおっしゃっていました。やはりこれは寶船で日頃から教えられてることなんでしょうか。

そうですね。阿波踊りは絶対に挑戦していくものなんですよ。常に新しい”今”を踊る必要があるんです。だから会議のものではないんです。例えばサッカーでも、戦略を立ててこのフォーメーションでいくと決めても、相手の攻め方で戦い方が変わるじゃないですか。同じ作戦に固執してたら負けてしまいます。相手もどんどん変化しますから。それと同じで、「阿波踊りってこういうもの」と決めてしまうと芸が時代に負けてしまう。焼き増しでは感動しないんです。お客さんも時代もどんどん変化していきますから。ですから、新しい息吹を吹き込み、今の阿波踊りを挑戦して予想だにしなかった作戦でゴールを狙わないといけないんです。危ない橋なんじゃないかという、リスクがあるものをやっていきたいです。でも新しいといっても、変な動きとか、目新しいものをやるだけでは奇をてらっているだけで新しくありません。本当に予想以上の新しいものは熱狂しますから。

(次回につづきます)

米澤 陸 (よねざわ・たかし)
1991年東京都出身。『創作舞踊集団 寶船』の連長の息子。寶船では踊り手、技術指導などを担当。次回10月24日の秋公演「宝が宝がやってくる」では、舞台演出を務める。