ビジネス 阿波踊り

どんなチャンネルで勝負する?! 阿波踊りにおける収益構造の課題

2015/07/31

「寶船は、既存のチャンネルをどう選択するかが活動のカギになると思いますよ」
以前、仲良くさせてもらっているベンチャー企業の方から、こんなアドバイスをいただきました。

「チャンネル」とは流通チャンネルのこと。商品を送り出す道筋です。エンターテイメント業界と一口に言っても、流通チャンネルは様々。例えば、音楽を例に考えてみます。

音楽業界では新曲をリリースすることが一般的な軸になります。CDが売れなくなっているとはいえ、何らかの楽曲を売る仕組みを起点に、企業の戦略は組まれます。
レコーディング、店舗への流通、広告、メディア戦略、PRイベントの出演と企画、ライブの動員。こうした「楽曲をリリースする」というチャンネルだけでも、多くの会社が力を合わせています。

映画であれば、制作しPRし上映、さらにDVD化というチャンネル。出版にしても、演劇にしても、テレビやラジオにしても、その世界独自の強い流通チャンネルを持っています。

では、阿波踊りのチャンネルは??

では、阿波踊りはどうでしょう。

そこには流通チャンネルがほぼなく、「夏が来たら阿波踊り!」という域を出ていません。芸能を市場に売りビジネスを成立させる視点が皆無です。

また、「オファーが来たら出演し対価をいただく」ということは真っ当に感じますが、価格を上げるか出演数を増やすかの2択しか業績が上がりません。つまり(シンプルに言えば)最高でも365日×出演価格で会社の利益は頭打ちとなります。

ですから、アーティストの時間が拘束されない方法での市場へのアプローチが必要です。出演以外にもう一つ大きな柱を立て、戦略を練らなければ苦しい状況が変わらないのです。

流通チャンネルを1から生み出すことは、よほどの資金力と人脈、そして知名度がなければ成立しません。今の寶船では難しい。最良の「既存のチャンネル」を選択し、集中する。その中で、コンテンツとしてイノベーションを起こしていく。これが最短かもしれません。

ヨーロッパツアーでの経験

そのことが改めて身に染みたのは、ヨーロッパツアーでした。
3週間に渡りパリ、ロンドンを回った今回のツアー。共演させていただいたアーティストは、VAMPSさん、でんぱ組.incさん、藍井エイルさん、X JapanのYOSHIKI&Toshiさん、東京女子流さん、May J.さんなど。

この方々には共通点があります。全員、武道館でワンマンライブが出来るレベルのアーティストだということです。

この中に、私たち寶船。はっきり言って無名。そしてたったの5人。ステージや条件は他のアーティストと全く同じ。持ち時間も同じ45分。恐らく、武道館クラスのアーティストがこんなに集まる中で、たった5人で45分間勝負できる阿波踊り連は他にないでしょう。

結果は、驚くほどの反響でした。大成功と言っていいと思います。メディアの方や現地のスタッフ、運営に携わる皆様に絶賛していただけるほど。現地のテレビ局から取材を受け、サイン会は行列ができ、DVDは完売。ドイツ人のイベンターの方に「来年私の国にも来てほしい」と興奮気味に誘っていただきました。個人的意見ではなく、客観的にも間違いなく会場を盛り上げていたと思います。

しかし。私はこの経験で、「阿波踊りの流通チャンネルの弱さ」を改めて感じるのでした。

他のアーティストさんはライブやフェスティバルへの参加を、チャンネルの道筋と捉えていることを目の当たりにしたのです。つまりライブの盛り上がりが次の活動へのブースターになってるのです。

ライブを盛り上げ、ヨーロッパで発売するCDの告知をし、新曲発表。サイン会で先行発売をしてCDを手売り。握手をしてファンを掴み、グッズを売り、直近に開催予定のヨーロッパでの単独公演へ誘導。その頃スタッフは、メディアへ向けて「ライブ大成功!」というプレスリリースを書き、現地のメディアへもアプローチ。音楽であれば音楽雑誌、音楽番組、ラジオなど、J-カルチャーの強いパイプに乗せるわけです。

つまり「音楽」というジャンルは、《PR→リリース→収益の回収》という構造に様々な企業、メディア、イベンターが網の目の様に協力し合い、成立しています。この構造は、「音楽」というエンターテイメントが世界に広まり、ビジネスとして成果を上げはじめた頃から時間をかけ作り上げてきたもの。
業界の中から見ると、「構造がもう古い。時代に合わせた変革が必要」という指摘もあるかと思いますが、私たちから見るとなんとたくましい業界でしょうか。

既存のチャンネルを持たない分野の現状

一方、私たちは。…ないのです、その収益構造が。会場を一流アーティスト級に盛り上げ、ファンも付き、スタッフもみんな喜んでくれている。メディアも気に入ってくれた!けど、その成果を収益として回収する受け皿がないのです。

メディアの方も、例えば音楽ライターは「盛り上がってたけど、阿波踊りは音楽じゃないからうちで扱うジャンルじゃない」と考え、ラジオも「阿波踊りは、曲を流すことができないなぁ」と思ってしまう。(「阿波よしこの節」があるじゃん!と思われるかもしれませんが、武道館クラスのアーティストに並んでオンエアされても大丈夫なほど、時代に合ったオリジナル曲は残念ながらありません。)

つまり!既存のチャンネルを持たない私たちのようなアーティストは、メディア・イベンター・レーベルなどから絶賛されても【自分の専門じゃない】と認識されやすいのです。

同じ日本文化でも、これが津軽三味線や和太鼓なら音楽という流通チャンネルに乗せることができます。阿波踊りは(現時点では)厳しい。盛り上げるだけ盛り上げても、ビジネスとして成立しにくいのです。

ヨーロッパツアーが大成功し、メジャーアーティストさんと互角に戦えた自信が芽生えれば芽生えれるほど、チャンネルの無さに差を思い知るのでした。

そして、以前いただいたアドバイスが頭の中をぐるぐる。
「寶船は、既存のチャンネルをどう選択するかが活動のカギになると思いますよ」

確かに。ヨーロッパツアーを経験した今、よりその通りだと実感します。もう一段階成長できるよう、夜な夜な策を練る私でした。

さらに成長できるよう、頑張ります。

 

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米澤 渉
1985年、東京都生まれ。一般社団法人アプチーズ・エンタープライズ プロデューサー。寶船プロメンバー「BONVO」リーダー。山形県米沢市おしょうしな観光大使。日本PRのCM『日本の若さが世界を変える』に出演。「my Japan Award 2014」 にて《箭内道彦賞》を受賞。

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