阿波踊り好きなら常識!? 阿波踊り三大主流とは?

阿波踊りを見る時に、「どの(誰の)踊りが上手いか」とを考える方は多いと思います。表現力・統一感・優雅さ・ダイナミックさなど、技術の基準には幅があり、それを数値化するようには判断できるものではありません。

ここで大切なのは、「阿波踊りに、絶対的な正調はない」ということ。こう踊れば正確という絶対的な答えはありません。何故かというと、阿波踊りは「連」と呼ばれるチームで活動しており、各連ごとに思考をこらし、踊り方や演出を作り上げているからです。その為、連ごとに全く踊り方が違います。

「正調」についての探求は、こちらに詳しく書いたのでご参照ください。

「じゃあ阿波踊りって、なんでもありなんだ」と思われるかもしれませんが、もちろんそうではありません。

絶対的な正調はありませんが、基準になる流派がちゃんとあるのです。それを知っているだけで何倍も見るのが楽しくなります。

今回は、「阿波踊りをもっと深く楽しむには具体的にはどうすればいいの?」という方のために、一歩踏み込んだ鑑賞のポイントをご紹介!今回ご紹介するポイントを知ると、より深く面白さに気付いて頂けると思います。

そんなわけで、阿波踊り鑑賞の中級者向けの内容です。阿波踊りを見慣れてない方は、実際に会場で見て、シンプルに「かっこいい!」と感じて頂ければそれで正確です。難しいことを考えずにお祭りとして楽しんでくださいね。

阿波踊り三大主流

阿波踊りには、「三大主流」があることをご存知でしょうか。この「三大主流」という言葉は、徳島の有名連である代表的な3つの連からその名を取り、語られています。

戦後、阿波踊りの連は、少しずつ分かれながら発足してきました。その場合、元の踊り方の流れを汲むことが多いので(例外も多々ありますが)、歴史を遡ると三大主流のどれかに当てはまっていたりします。

この「三大主流」という言葉自体は比較的新しい言葉なのですが(僕の知る限り、20年前にはあまり広まっていなかったように思います)、踊りタイプの分かりやすさから、今では阿波踊り業界の必須ワードになっています。

この三大主流と苔作調(ドカドカ系)、計4つを覚えておくと、阿波踊りを見る基準になりやすいのです。

1、のんき調
2、娯茶平調
3、阿呆調
4、苔作調(ドカドカ系)

※この記事を読んで頂いてる方の中には、阿波踊りの知識に長けている方もいらっしゃるかもしれません。今回はあまり阿波踊りに触れた事のない方にも魅力が伝わるよう簡略化して話を進めております。ご了承ください。

では、一つ一つ解説致します。

1、のんき調

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徳島の有名連、「のんき連」さんからその名がつきました。三大主流の中で一番古くから踊られています。

僕も個人的に大好きなのんき連さん。いつも徳島に訪れた時には、連長の南條さんにご挨拶させて頂いております。人柄もあたたかく、素晴らしい連です。
のんき調は、自由で人間味のある踊りが最大の魅力です。

特徴

背筋を伸ばしつま先を立て、腰をぶらさず、上半身は自由に、明るく踊る。三大主流の中では最も朗らかな雰囲気を持つのが特徴。

起源

一説によれば、農民や商人の踊りからはじまったそうです。民衆の踊りと呼ばれる阿波踊りの中でも、すごく庶民的で親しみやすい雰囲気を持つのんき調。農民や藍染の商人が(徳島は藍染が有名)、明るく毎日を楽しんでいる様子が、踊りからも感じとることができます。

ここでは入門編として、ざっくりと「農民の踊り」と覚えておくといいと思います。

系譜

のんき調の流れを汲む連というと、無双連さんやうずき連さん、新のんき連さんなどでしょうか。のんき連さんから分かれて発足した連が多いです。東京ですと、ひょっとこ連さんや東京新のんき連さんなど、徳島との姉妹連を組む連の方々もいらっしゃいます。

他にも、ここに名前を挙げられませんが、のんき調の流れを汲む素晴らしい連はまだまだたくさんあります。ぜひ探してみてください。

2、娯茶平調

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「ごぢゃへい」と読みます。徳島の有名連「娯茶平」さんからその名がつきました。娯茶平さんは、もう誰が何と言おうと、阿波踊り業界最高峰の素晴らしい有名連です。娯茶平さんは結成当初、「オール前川娯茶平倶楽部」という名で活動しており、その時に指導に当たったのがあの有名な林鼓浪さん。寶船連長の曾祖父である市川寿三郎とも深い親交があった方です。寶船と娯茶平さんが歴史の中でつながっている気がして嬉しくなります。

特徴

腰を低く落とし、前傾姿勢。スローテンポなよしこの節に合わせ、タメの利いた踊りをします。地を這うような渋い踊りが特徴です。

起源

一説によれば、当時勢いのあった華やかな踊りに対抗し、スローテンポで渋みのある踊りに振り切り一世を風靡したといいます。また、調べたところによると、戦後、鎮魂の意も込めて踊ったという話もありました。その後、娯茶平の伝家の宝刀である「網打ち」を生み出し、現在の踊り方が確立されたといいます。これは、漁師の網を投げて引く動作を模倣したものです。

ここでは入門編として、「漁師の踊り」と覚えるとわかりやすいと思います。

系譜

娯茶平調の流れを汲むのは、さゝ連さんや藝茶楽さんなどです。東京では、娯茶平さんの姉妹連である飛鳥連さんが一番有名ですね。
他にもたくさん素晴らしい連がいらっしゃいます。阿波踊りの神様として有名な四宮生重郎さんも、元々は娯茶平の連長さんなので、系譜は娯茶平調の流れと言えます。

腰が低くスローテンポな連を探してみてください。歴史を遡ると、娯茶平調の系譜の可能性が高いです。

3、阿呆調

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徳島の有名連「阿呆連」さんからその名がつきました。三大主流の中でも最も激しい踊り方をします。

僕が、小さい頃に一番魅了されたのはこの阿呆調の踊りでした。提灯踊りのカッコいいこと、カッコいいこと。縦横無尽なその踊りに心を鷲掴みされ、よく真似をしていました。

特徴

前傾姿勢でリズムカルに、跳ねるように踊ります。激しい男踊りは「暴れ踊り」とも呼ばれます。手には提灯などを持つことも多く、手拭いで盗人被り(鉄火とも呼ぶ)をすることも。

起源

激しい暴れ踊りで定評があった阿呆連さん。現阿呆連会長の山田さんが「武士の踊り」と呼び始めたことにより、武士の踊りという認識が定着、現在に至ります。

ここでは入門編として、阿呆調は「武士の踊り」と覚えておくといいと思います。

系譜

阿呆調の系譜と考えられるのは、殿様連さんやまんじ連さんなどでしょう。東京では、阿呆連さんの姉妹連である江戸っ子連さんなどが有名です。

どこの会場に行っても、提灯を振り回し暴れ踊りをする連が見付かると思いますが、これは阿呆調の流れを汲むものです。

4、苔作調(ドカドカ系)

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最後に、三大主流に当てはまらないオルタナティブな流派をご紹介します。これは、徳島の「苔作」さんが発祥とされ、「ドカドカ系」や「打楽器系」、「一拍子系」などとも呼ばれます。音楽的には「一拍子」という言い方自体がおかしいので、16ビート系と言った方がいいと思います。

呼び方が様々ありますので、ここではドカドカ系(オルタナティブ系)としました。大迫力の打楽器が聴ける人気の流派です。

特徴

鳴り物は多くの場合打楽器のみ。顔より大きな鉦、スネアドラムのような太鼓、そして大きな大太鼓を多く揃え、8ビートや16ビートを行き来しながら爆音で鳴らす。

男連員は短髪にヒゲなど、男らしさがにじみ出た雰囲気を持つ。踊りは腰を下ろし安定させながら、手を上下に動かすのが特徴。
入門編として、「異端児の集団」(もちろんほめ言葉です!!)と覚えるとわかりやすいです。

起源

苔作さんが元祖と言われるこの流派。そこから分かれや影響を受けた連が多数発足。今では三大主流に迫るほどの人気の高いジャンルになっています。

系譜

このドカドカ系の系譜で言えば、徳島では苔作さんの他に、大黒天さん、双六さんや七彩さんなどもここに含まれるでしょう。

東京では、東京天水さん、忍連さんなどなど、少し考えただけでもたくさんいらっしゃいます。前回挙げた娯茶平の岡連長さんの息子さんが大黒天さんに所属していたことを考えると、さらに阿波踊りの面白さに気がつきます。

まとめ

今回は中級者向けと言うことで、駆け抜けるように解説しました。

主流の踊り方があるとはいえ、そのコピーではなく、芸体を少しづつ変えて発展しているのも阿波踊りの魅力の一つです。ぜひ実際に、多様な阿波踊りの魅力に触れてみてください。

時間があれば一連づつ熱く語りたい!そのくらい、どの流派もどの連も心から敬愛しております。

大切なのは、「うんちく」を議論することではなく、あくまでも阿波踊りを楽しむというスタンスで知識を増やすということです。唯一の答えなど阿波踊りにはなく、連ごとの信念や美意識を具現化したものが踊りになります。「なんでもあり」と「阿波踊り」という境界線は、今回書いたような歴史を汲み取り、その伝統にリスペクトがあるか否かではないでしょうか。

私たち寶船も頑張ります。

以上、
1、のんき調
2、娯茶平調
3、阿呆調
4、苔作調(ドカドカ系)

についての解説でした。

 

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