自分たちの価値は、安全圏の外に出て初めて正面から問われ、磨かれていくものです。
日本に住んでいると「日本の魅力って何ですか?」と問われることはほぼないです。同じく、阿波踊り業界ではわざわざ「阿波踊りの本質的な魅力は?」と問われることはありません。あったとしても雑談で話すくらい。
でも、いざ海外に出てみると、世界からの関心は「その文化の魅力の本質はなんなのか」。そして、「なぜあなたは人生をそれに費やすのか」がトップになります。質疑応答やインタビューでもそう。
灯台下暗しのようで、逆に新鮮な質問です。自分の想いがいかに言語化できてなかったかに気が付きます。
このような、暗黙の理解があるコミュニティの外から投げかけられる率直な問いは、向き合うことで、自分の存在意義を磨いていくことができます。
「視点の高い言語」と「現実に迫った言語」
この時に重要なのが、抽象化された視点の高い言語と、裏付けを元にした現実に迫った言語を、どちらも持つこと。
鳥の目と虫の目はどちらも必須です。
同業者や若者を見てて感じるのは、この言語化の解像度が低いこと。
一番恐ろしいのは、「人を笑顔にしたい」みたいな、誰も批判できないけど何にも当てはまることを、あたかも自分のやりたいこととして話すことです。人生で獲得してきた言葉で存在意義が表現できてない。コピーに酔ってるだけです。
自分の体験は唯一無二なのと同じで、自分のパーソナルな魅力は自分にしかない。だから自分の「なぜやってるか」「何をやりたいか」は、自分の言葉で解像度高く言語化しないと意味ないんですよね。
言葉の巧さじゃなく、「あ、そういう背景でその感情を獲得したんだ」という納得感が必要なんです。
逆に、社会にインパクトを残し成果を上げてる人は、この「自分の言葉」で話すのが格別です。
エンタメやアートの世界でもふんわりした言葉ではなく、
- 抽象度を高めて旗を立てる
- 具体的な裏付けや数字を元に納得感を強烈に届ける
という、解像度の上下ができる人は無敵なんです。何をやるにしても。
WHYの刃を自分に向ける
ではここからは、「じゃあどうしたらその『言葉の獲得』ができるの?」って方法を書いてみたいと思います。
まず、アートやエンタメは、問題提起と課題設定だということを自覚すること。
自分がパフォーマンスしたり作品を作ったりする根本は、本能的な快感だと思うのですが、「その快感は私にとってなぜ必要なんだろ?」という、WHYの刃を自分に向けるところからはじめましょう。
すると、その熱量のきっかけは幼少期の成功体験だったり、衝撃だったり、挫折や悔しさだったりします。または社会への疑問や理想だったり、なりたい自分への通過儀礼だったりします。
この「原体験」に紐付けられたきっかけを探すと、もう以前とは比べものにならないほど唯一無二になってきます。つまり、動機付けには過去の原体験と今をつなぐ時間軸が必須なのです。これがベースとなる横軸になります。
次に、原体験で生まれた感情を、「具体化」と「抽象化」を両方に思考しましょう。そしてなるべく言語化してみます。ブログに書いたりしてもいいですね。
すると、解像度の上下、つまり縦軸が明確になってくる。
- 人生の時間軸で「過去と今の横軸」を引く
- 抽象化と具体化で「解像度の縦軸」を引く
この2つの思考が大事なんです。
- の横軸はストーリー
- の縦軸は抽象化されたミッションと具体的なビジョン
になっていくわけです。
で、最初に戻りますが、その座標でWHYとWHATが鮮明になってくると、問題提起と課題設定が言葉にできるようになります。そして、根拠も合わせて伝えることができます。
それが表現や作品に説得力を持たせるのです。
ここまでのプロセスを踏んで自分の活動を伝えられたら、あなたの目線で世界を見てる人はあなたしかいないので、アウトプットも自分の獲得した言語と熱量で語れるはずです。
抽象化すると、成功者はみんな同じことを言ってるようにも見えるんだけも、そこに至ったストーリーや根拠がみんな唯一無二。だからみんな成功者は想いを共感し合えて、なおかつ思想にはオリジナリティがあるのです。
逆に、WHYの刃と向き合っていない中で、抽象的な「聞こえのいい言葉」だけをファッション的に真似しても、重みがありません。正義や美談はポエム化しやすく、真似しやすいからです。これは僕らも本当に気をつけたいところ。
参考図書
最後に、アートやエンタメを言語化する参考図書として、
- 岡本太郎「今日の芸術」
- 村上隆「芸術起業論」
- 立川談志「現代落語論」
などをぜひおすすめしたいです。
3冊とも、アートやエンタメについて圧倒的なロジックと燃え上がる熱量で書かれていて、論理と思考の解像度が高く、汎用性もある素晴らしい本です。