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「阿波踊り3.0」論|阿波踊りの世界を変えるのではなく、阿波踊りで世界を変えたい

2018/08/22

阿波おどり業界にとって、今年2018年はかなり激動の夏でしたね。総踊り問題が世間を賑わせ、よくも悪くも国民的なニュースとなりました。本来の争点は「総踊りを決行するのか、中止にするのか」じゃないのだけれど、そこだけが切り取られて論じられた印象もあります。

私たちも含め、世の中は「どっち派?」と言いながら対立構造を少なからず楽しんでたようにも思います。しかし、内情を聞けば聞くほど、二元論じゃないなというのが、正直な気持ちです。

寶船は、徳島阿波おどりが終わった今こそ、阿波踊りの真の価値をしっかり世界に伝えていきたいです。

苦い経験を元に、課題解決のロールモデルへ

そもそも、どんな業種もビジネスモデルの仕組みは時代が経てば必ず古くなります。この数年間は、ITの進化により余計にです。主張の食い違いよりも、アップデートに集中していくときです。阿波おどりと同じ課題が、全国の伝統芸能や日本文化にあるわけで、その課題解決のトップランナーを目指しませんか。

課題が浮き彫りになり、苦い経験をしたことは、今後の大きなリソースになります。一致団結して這い上がったら、逆に徳島に視察が押し寄せるようなロールモデルにもなりえるはずです。

阿波おどりの業界は、もっと外に目を向けていくべきだと思ってます。阿波踊りという文化の魅力は世界的に見ても素晴らしい。間違いないです。でも、視野が狭いのは否めません。

連は、県や市や協会から降ってくるような依頼に頼らず、自発的にできることを考える。お祭り当日に、当たり前に来てくださる多くの観客の皆様におごらず、胡座をかかず、その先の市場を見つめてアクションを起こし、成長していきたいです。

財源なら、ユーザーのキャッシュポイントの設計を真剣に考えればいい。海外からの動線、国内からの動線、交通や宿泊のインフラの最適化、体験への誘導と拡散のデザイン。そして何より大切なのは人々が楽しみながら熱中して運営し盛り上げていること。立案・企画から開催まで、オールシーズン踊る阿呆の気概です。

インバウンドの外国人観光客も、正直少なすぎます。お金をかけなくても、もっと色々とできるはず。

寶船が出演した先日の下北沢阿波おどりでは、私たちの踊りを見るために、世界中から観客が集まりました。
把握してるだけでも、イタリア・ローマ、フランス・パリ、ブラジル・サンパウロ、スイス・ベリンツォーナ、イギリス・ロンドンなどから寶船を目当てに来た方がいました。
もちろん日本国内は、徳島をはじめ全国から来てくださいました。

数十人しかいない小さなグループなのに、です。本気になれば、確実に世界中から人は集まります。

このタイミングで、短絡的に「今年の徳島阿波おどりは来場者が最低だった」とか言っても無意味です。誰の責任でもなく、ここ数ヶ月の阿波おどりに対する社会全体の空気が結果をつくったに過ぎません。

人数を嘆くより、どう世界を巻き込んでいるかを見直す方がよっぽど重要です。人間万事塞翁が馬。今年の来場者減も、更なる飛躍への狭間だったと考え、阿波踊りのピースフルな雰囲気や多様性、生命を肯定する逸脱した熱気を発信してきいたいです。

実際に、私たちにとっては、今年も徳島阿波おどりは最高でしたから!

「阿波踊り3.0」とは?

無礼講の精神を持ち、民衆の祭りだった本来の形から、大阪万博の頃を機に桟敷席が整備され、商業化・集団美型に成長を遂げた阿波踊り。今、その阿波踊りがさらに変革を遂げる帰路に立っています。

インターネットの台頭によって、世界中と繋がれる現代。顔の見えない集団統一型から、個人がメディアとなり人間性や相手への共感で人が集まる時代。

未熟さも含めて価値になり、「高品質な踊りを見に行く」から「あなたに会いにいく」と、阿波踊りは変貌を遂げていくはずです。

民衆の無礼講の祭りを仮に「1.0」とすると、商業化に進んだ集団統一型阿波踊りが「2.0」。そして、今後、阿波踊りは、「3.0」の新たな時代に入っていきます。

寶船は、その先駆者となりたい。リスクを恐れず飛び込むファーストペンギンになろうと思います。

最後に

寺山修司は生前、「僕は演劇の世界を変えたいんじゃない。演劇で世界を変えたいんだ。」と言ったそうですが、寶船も「阿波踊りの世界を変えたいんじゃない。阿波踊りで世界を変えたいんだ。」と日々考えています。

そしてそれが、徳島や阿波踊り業界のためにもなると思ってます。

踊る阿呆の皆様、徳島市や徳島県の皆様、一緒に頑張りましょう!

今後も応援していただけると幸いです。

備考

  1. 徳島市の阿波おどり大会を表す際には「阿波おどり」と「おどり」を平仮名で明記し、文化自体の阿波踊りを表す際に「阿波踊り」と漢字で明記しています。
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米澤 渉
1985年、東京都生まれ。一般社団法人アプチーズ・エンタープライズ プロデューサー。寶船プロメンバー「BONVO」リーダー。山形県米沢市おしょうしな観光大使。日本PRのCM『日本の若さが世界を変える』に出演。「my Japan Award 2014」 にて《箭内道彦賞》を受賞。

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